アクセントやイントネーションは、同じ日本語でも使っている方言によっても違うことから、「さくらんぼ イントネーション」、「しめじ イントネーション」、「コーヒー イントネーション」、「筆算 イントネーション」などと検索されている方もいるぐらい、アクセントとイントネーションを同じ意味でごっちゃに使っている人は多いです。
そこで、イントネーションについて詳しくまとめてみましたので、参考になればと思います。
目次
アクセントとイントネーションの違い
まず、イントネーションの定義を、ごっちゃになっているアクセントと比較してみましょう。
- アクセント(accent)とは、単語を区別することです。
- イントネーション(intonation)とは、話し手の表現意図や気持ちなどニュアンスを伝えることです。
アクセントの意味
アクセントといっても、ピッチアクセントとストレスアクセントなどに分類されます。
- ピッチアクセント(高低アクセント)は、どこを高く発音するかが重要です。(日本語など)
- ストレスアクセント(強弱アクセント)は、どこを強く発音するかが重要です。(英語、ロシア語など)
- 声調(トーン)は、語全体をどのような音調で発音するかが重要です。(中国語、タイ語など)
ただ、言語学者になる訳ではないので、日本語はピッチアクセントということだけを知っておいてください。
つまり、関東と関西での高低するところの違うことば「箸」と「橋」は、方言によるアクセントの違いといえます。
イントネーションの意味
次に、イントネーションです。
単語会話でも、話し手が感心・疑問・落胆・同意などの感情的な意味を込めて使っていた場合は、アクセントの上にかぶさって抑揚の変化が加わるということになります。
この”話し手の表現意図や気持ちなどニュアンスを伝える”を基準にすると、「箸~」と単語を伸ばしたりする変化も、「箸」に嫌がっているなというイントネーションがかぶさってということもわかるはずです。
イントネーションで変化する発音
ほんらいの文レベルのイントネーションをみてみましょう。
イントネーションの基本単位は、意味が通じる範囲でなるべく細かく切った文節「/」とほぼ一致します。
- いい / 人 / じゃ / ない
文として書き起こせばそれだけですが、話すときはどうでしょう?
実際の会話では、疑問、断定などの表現意図だけでなく、対人関係・皮肉・本音などといった気持ち。つまり、意識の有無にかかわらず、文字だけでは伝達できない情報が込められ話していますよね。
そして、それは発話ごとに、流動的な変化です。
例文
それでは、『いい人じゃない』を発話したときの、文字では書けないイントネーションの働きあげてみましょう。
- 否定
- 「ない」の高低のアクセントをそのままで、本来の意味に。
- 肯定
- 「ない」の高低のアクセントを逆に上昇調にすることで、『いいひとなんだ』という逆の意味に。
- 反論
- 「いい」を強調することで、『あなたは悪い人のように言うけど、違う。いいひとなんだよ』という、ちょっとした反論を表現。
- 称賛
- 『なんていい人なんだ!』を込めた表現。
つまり、文字では書けないイントネーションが、発話に豊かな表現力を付けているんですね。
イントネーションの主な機能
声を上昇調、下降調、自然下降調など変化させているイントネーションを分類すると、4つの意味機能に分けられとされています。
すごく奥の深いところなので、少しだけ紹介しておきます。
文法的機能
・話し手が、何を一番に伝えたいかで変わる。(プロミネンス)
・単語どうしの意味の限定関係や意味的な一体性で変わる。
・疑問などの文のモダリティ (modality) で変わる。
・大きな意味の区切りを示したり、発言が終わっていないことを伝える。
例文
- 行く↑よ
- 終助詞「よ」「ね」「わ」などの音調を変えることで、ニュアンスを変えることもできる。
- むかしむか↑し ある所↑に おばあさん↑と おじいさん↑が 住ん↑で いました。
- ポーズがあっても自分の話はまだ続くことなどを示す。
情緒的機能
話しているときの気持ちが無意識のうちに声に現れるイントネーション。
例文
きれいな 海だなあ!
- 意味の限定
- 「きれいな」と限定された場合、「海」のアクセントは弱まるので、単に情報を提供しているだけと受け取られる。
- しみじみ調
- アクセントを弱めないで言うと、しみじみした情感を表現できる。
こいつは ひどい。
- 意味の限定
- 「ひどい」のアクセントは普通にすると、他人事になる。
- 感情主張調
- 「ひどい」のアクセントを弱める言い方をすると、述語で表しているような気持ちを、今持っていると強く訴える表現できる。
社会的機能
お詫びなど人間関係調整する際のイントネーション。
例文
ごめんね。
- 共通語
- 「ごめんね」
- 大阪弁
- 「ごめんね↗」
文体的機能
会話や朗読調など、話し方のスタイルで変わるイントネーション。
地域によって変わるイントネーション
住んでいる地域によってもイントネーションが違うのは、「本来こういう言い方をするのが、当たり前でしょ?」という社会的機能にも地方差があるからです。
つまり、認識のズレですね。
例えば、福岡の「~ですね」という言いまわしを同意する意味で使ったり、言葉の語尾に「~だ」・「~だれ」を付けて推定の意味で使ったりするなどは、文法的機能とからむ地方特有の社会的機能です。
要するに、そんなつもりがなくてもイントネーションの違いによって、『誠実さがない』、『バカにしている』、『いやらしくて嫌い』などと受け取られるのは、方言による社会的機能の違いなのです。
おかしいイントネーションは、どう直せばいいか?
アクセントは方言によって異なり、これにともなってイントネーションにも違いが生じるので、イントネーションをそれっぽくするには、アクセントともに使う方言に合わせる必要があります。
例えば、あなたは関西弁を使えないのにキャスティングされた場合は、関西弁を録音し、台本にイントネーションの変化を書き込んで何度も反復練習すると、手っ取り早くなりきれます。
あくまでも台本ありきの話ですが、音感のある人ならアクセントの違和感にも気づきますし、その方が早く上達し役作りできるはずです。
まとめ
- イントネーションによって、話し手は表現意図や気持ちなどニュアンスを伝える。
- イントネーションには、文法的機能・情緒的機能・社会的機能・文体的機能がある。
- 方言によって社会的機能も違うので、相手に表現意図を誤解させてしまうこともある。
演技レッスンで、「アクセントが違う!」、「イントネーションが違う!」と指摘されても、具体的に何がおかしいのかわかるようになったはずです。
アニメーションの仕事では、声優は単純にわかりやすい芝居を求められ、それに応える必要があるので、イントネーションを掘り下げる必要はないかもしれません。
しかし、そもそも演技は人間を表現するものです。
一歩すすんで類型の芝居におさまらない、生きている人間を演じられるようになるには、常日頃からイントネーションに現れる文字では書いていないニュアンスの意図まで深く考えることが大切です。
それが、長い目でみると声優として差を生みますし、イントネーションの違いなどの個性や特色がOKになるナレーションや舞台や俳優などの仕事でも役立つはずです。