大人から子どもまで大人気のディズニー作品。毎年のように新作が発表され、日本語吹き替え版を誰が担当するかは、毎回ニュースになりますね。

声優を目指す人の中には、ディズニー作品の吹き替えに憧れる人も少なからずいることでしょう。いったい、どのようにして日本語吹き替え版の声優が決まるのか気になる人も多いのではないでしょうか。

今回は、吹き替え声優を採用するときに重要視される、ディズニーならではのポイントをまとめてみました。

目次

ディズニーの吹き替えを管理する部署

世界中で公開されるディズニー作品は、何カ国語もの吹き替え版がありますが、いったいどこが管理をしていると思いますか?

ディズニーには、映画やテレビ作品のキャスティングはもちろん、しゃべる玩具、ディズニー・リゾートのキャラクターボイスにいたるまで、グループ全部門の音声をまとめて担当する部署があります。それが、「ディズニー・キャラクター・ボイス・インターナショナル部門」です。(以下、「キャラクター・ボイス部門」)

ディズニー作品のキャスティングの歴史は、なんと、創設者であるウォルト・ディズニーがミッキーの声をあてたというエピソードから始まります。

ディズニー映画での声優の決め方

ディズニーが設立当初からキャスティングに関して大切にしている精神があります。それは「キャラクターが本当に存在しているんだと信じてもらえるような声にする」ことです。

キャラクターは時代とともに変化する部分はありますが、愛されているキャラクターがいつまでも生きられるように、声についての配慮をするのが、キャラクター・ボイス部門の役割です。

あらゆる言語で同じクオリティを

アニメや映画に登場するキャラクターは、見た目や立ち居振る舞い、台詞の内容などに性格や役割が表れます。

もちろん声もキャラクター作りにとって大切な要素です。声を聞くだけでもキャラクターのイメージが立ち上ってくることからわかりますね。声は、目には見えませんが、印象を左右する大切な要素です。声のトーンや質、あるいは話し方など、目に見えない部分で、キャラクターを強く印象づけるからです。

ディズニーでは、吹き替え版を製作するにあたり、どの国の言葉でも声のイメージが変わらないようにしています。たとえば「アナと雪の女王」の主題歌として有名な『レット・イット・ゴー~ありのままで~』には、25か国語バージョンがありますが、聞いてみると、どの言語でも驚くほど声と表現に差がないのです。

これは、オリジナル版の体験をそのまま伝えたい、というキャラクター・ボイス部門の方針のためです。

これは、先に挙げたように、「キャラクターが本当に存在しているんだと信じてもらえる」ためには大切なことで、もしも日本語版とオリジナル版とで主人公の声がまったく違っていたら、日本の視聴者はとまどってしまい、主人公のイメージが崩れてしまいかねません。

ですから、日本語吹き替え版の声優を選ぶ時には、オリジナル版の声質とできるだけ似ていることが重要な基準となります。

キャラクター・ボイス部門の担当者の話では、作品の中で特に重要な役については、正式に吹き替え声優を決める前に、ディズニー本社の承認が必要です。

さらに求められる歌唱力

では、声質が似ているからといって、ディズニー作品の吹き替えを担当できるかというと、さらにクリアしなくてはならない条件があります。それは歌唱力です。

ディズニーの映画作品は、もともとミュージカル的な要素が強く、キャラクターが歌う場面が数多くあります。場合によっては、台詞と歌で別の声優をあてることもありますが、当然、同じ声優の方が望ましいわけです。

吹き替え役の声優を決めるオーディションでは、台詞だけでなく、歌のオーディションも行います。そこで「年齢感」「声の高さ」「声の質感」「演技力」「歌唱力」などをチェックした上で決定しますが、重要な役については、まず日本の審査で候補者をしぼり、ディズニー本社に音声を送って最終的な決定をします。

近年ヒットした「アナと雪の女王」の場合、作品中では歌が特に大きな役割を果たしているため、オリジナルキャストは、舞台出身の実力派俳優がそろっていました。

※注記:主要CVのみ。

すると、この作品の日本語版吹き替えのキャスティングにも、必然的に同じような背景と力を持つ俳優が必要です。

オーディションの結果、神田沙也加と松たか子が主役ヒロインたちの声を担当しましたが、二人とも、舞台経験が多く、歌も歌える俳優です。このキャスティングは大成功でした。

キャラクター・ボイス部門の担当者は「神田さんも松さんも舞台経験が豊富なことも良かったと思います。しっかりと声を出す訓練ができていると声が浮かずにキャラクターたちにしっかりとなじむんです。」と語っています。歌唱力を含む総合的な演技力が成功の秘訣と言えるかもしれません。

実際、アナ雪に限らず、他のディズニー作品の吹き替え版を見てもやはり、宝塚やミュージカルで活躍している俳優がキャスティングされていることが多いのです。歌う力、声をしっかり出す力、そして表現力の重要性がわかります。

最後に

ディズニー作品の吹き替えを担当するために必要なポイントが見えてきたでしょうか。

ひとつは、オリジナルキャストの声に似ていること、あるいは似せられることが大事です。これはディズニーのポリシーに関わる大切な点です。

もうひとつは、台詞だけでなく、歌もしっかりこなせる俳優であることです。ディズニーの映画がミュージカル的な要素が強いためですが、主役級のキャラクターを演じるには、どうしても舞台経験が必要となります

もし、どうしてもディズニーの吹き替えに挑戦したい!というのであれば、思い切って舞台に上がる経験を積むのもアリかもしれませんね。

※注記:最新10作品の主要CVのみ。

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