声優やアナウンサーを目指す方にも、実際に声のお仕事についている方にも必携の日本語アクセント辞典ですが、ひとくちにアクセント辞典といってもいくつかの種類があります。どれか一冊を選ぼうとしても、いったいどんな部分を見て考えればよいのかわからない、という方も多いのではないでしょうか。
もちろん、気になるものは全部買ってしまうのが一番の理想ですよね。それぞれの得意分野は異なりますから、それでも無駄にはなりません。
しかし、家に置いておく分にはそれでも構いませんが、数冊の辞典をいつも持ち歩き、気になる単語が出てきたときに複数の辞典で確かめる、という使い方はあまり現実的ではありません。
どれか一冊を選びたい、という方のために、特に有名なNHK出版の『NHK日本語発音アクセント辞典』、三省堂の『新明解日本語アクセント辞典』の二種類のアクセント辞典それぞれの特徴をご紹介したいと思います。
目次
日本語アクセント辞典はそれぞれ何が違うの?
日本語アクセント辞典の定番『NHK日本語発音アクセント辞典』と『新明解日本語アクセント辞典』の違いについて、カンタンに解説します。
NHK日本語発音アクセント辞典
まず、『NHK日本語発音アクセント辞典』の特徴についてお話します。
NHK出版から刊行されているこの辞典は、NHK放送文化研究所がその編集にあたっています。それを考えれば当然ですが、このアクセント辞典は放送で使うアクセントを念頭に置いた辞典となっています。
NHKのアナウンサーにくわえ、一部民法キー局のアナウンサーを対象にしたアクセント調査など、最新の資料をもとに今一番支持されている共通語の発音・アクセントが選ばれています。
まえがきにも「放送でもっとも広く使われているアクセントを土台にし、かつ多くの視聴者からも支持されていると思われるアクセントを基準にしています。」とあり、テレビやラジオ等の放送で使われる一般的な「共通語」のアクセントに強い辞典であることがうかがえます。
放送に強いという性質から、基本的な言葉のみならず、日常よく使われるものも多く収録されています。言葉は時代の流れに乗ってめまぐるしく変化するもので、常に新しい単語や言い回しが生まれていきます。
そういった生きた言葉への対応が優れているのも、NHK出版ならではといえるでしょう。
新明解日本語アクセント辞典
それに対し、『新明解日本語アクセント辞典』では共通語というよりも「標準的な東京のアクセント」を重視しているようです。
『NHK日本語発音アクセント辞典』はどちらかというと玄人向けですが、『新明解日本語アクセント辞典』の方は「どんな人でも使用できることをモットー」としている、と明記しています。
プロの声優やアナウンサーが仕事で使用する場合はもちろんのこと、一般の人が正しい共通語のアクセントを知りたいという場合にも見やすく、理解しやすいよう編集されているのが特徴といえます。
『NHK日本語発音アクセント辞典』との違いは、形容詞や動詞など、文中で変化する単語のアクセントのバリエーションがすぐに引けるという点にあらわれています。
『NHK日本語発音アクセント辞典』でももちろん調べることはできますが、活用形のアクセントは巻末に載っているかたちになっていますので、一手間かかってしまうのは否めません。
その他の特徴としては、時代ごとにアクセントに変遷のある単語についてはもともとのかたちから現在までのアクセントの移り変わりも明記してあるということや、アクセントや発音の変化の法則、複合語のアクセントの法則など、発音やアクセントを体系的に学んで理解するためのまとめ部分が巻末に収録されているということなどが挙げられます。
『NHK日本語発音アクセント辞典』とくらべると、より教科書らしい使い方ができるアクセント辞典といえるかも知れません。
もうひとつのおすすめポイントとしては、『新明解日本語アクセント辞典』には音声CDがついてくるということがあります。辞典に載っているアクセントを、実際に耳で聞いてたしかめることができるのです。
アクセント辞典を見ればその単語のどこにアクセントがくるのかを調べることはできますが、万が一その見方を誤ってしまった場合、せっかく調べたのに間違ったアクセントでおぼえてしまう、ということになってしまいます。
特に、もともと東京などの共通語圏出身ではない方は、自分では標準語のつもりでもアクセントやイントネーションが違っているという場合が多くあります。テレビやラジオ等で慣れ親しんでいるつもりでも、微妙なズレがどうしても生まれてしまうものなのです。
標準語の発音やアクセントは、養成所などの講義で習うよりも、自分で勉強しておぼえることのほうが普通です。
アクセントのわからない単語に出会ったときに調べて共通語でのアクセントを把握する、ということの繰り返しでしょう。そのときに、実際に発音してくれるCDがあれば、自分の発音との違いに細かいところまで気が付くことができます。
違いを知ることは矯正への第一歩ですから、そういった意味でも辞書を購入するならCDのついている『新明解日本語アクセント辞典』をおすすめできます。
どちらを選ぶべきか
さて、『NHK日本語発音アクセント辞典』と『新明解日本語アクセント辞典』のそれぞれの特徴と違いについてご説明しましたが、いかがでしたでしょうか。
どちらがより自分に合っているか決めかねるという方は、自分がどういった用途でアクセント辞典を使いたいかを意識してみると良いかも知れません。
テレビやラジオなどの放送により適しているアクセントを身につけるなら、共通語のガイドラインとされている『NHK日本語発音アクセント辞典』。
実際の話し言葉や活用形を調べるのに便利なほうを選びたいなら、『新明解日本語アクセント辞典』がおすすめです。
どちらかといえば『新明解日本語アクセント辞典』のほうが初心者にもわかりやすい内容になっていますから、まずはこちらで勉強し、慣れたら『NHK日本語発音アクセント辞典』も活用してみる、という方法も良いでしょう。
アクセント辞典・電子辞書
主にCASIO、SHARPから発売されている電子辞書に搭載されていますが、採用されているのは『NHK日本語発音アクセント辞典』のみです。
音声はいずれも出ますが、聞き比べると収録されている音声に違いがあることに気づきます。
ちなみに公式サイトの内容を比較すると、以下のような違いがあります。
CASIO:音声データは、カシオが独自に作成しています。
SHARP:NHKアナウンサーによる肉声を使用しています。
昔はCASIOのみに入っていたので、自動的にCASIOの電子辞書を選ぶしかなかったのですが、これから購入を考えている方はSHARPの電子辞書がおすすめです。
CASIO公式HP(電子辞書) / SHARP公式HP(電子辞書)
アクセント辞典アプリ
音源や画像データは、版元である出版社から提供されているので同じですから書籍に付いて音源と同じです。
NHK日本語発音アクセント辞典アプリ
アプリ「NHK日本語発音アクセント辞典 」は、2017年8月31日で販売終了。
新明解日本語アクセント辞典アプリ
イントネーションを学べる辞典はないよ
アクセントは単語ごとに定まっているのでアクセント辞典で学べますが、イントネーションは勉強できません。
話し言葉のプロを目指すなら、誤解しないようにして下さいね。