さて、あなたが基礎を学び、事務所に入り、見事プロのナレーターになったとします。それで安泰というわけではありません。会社員と違ってナレーターは毎日仕事があるわけではありません。そして仕事がなければ収入はありません。
例えレギュラーがとれても、その番組自体が終わってしまったらそこで終了です。ナレーターという職業に保障というものはないのです。
孤独な戦い
タレントと違って常にマネージャーがついているわけではありません。ひとりで現場に行き、ひとりで仕事をして、ひとりで帰ります。収録も、多くの場合はブースに1人で入りヘッドホンごしにディレクションを受けます。ナレーターの現場は制作会社やテレビ局が多いので、収録現場はいわゆる普通の会社の人が多いです。もちろんこちらにも社会人としてのマナーが求められます。
プロは誰も叱ってもらえない
今もしこれを読んでいる人の中で、すでに養成所や専門学校で勉強をしている人がいたら、今学んでいること、講師の言葉をしっかりと心に留めておいてください。今は「何でこんなにうるさく言われなきゃいけないんだ」と思うことも、いつか現場に立った時に必ず役に立ちます。
あなたに向けられる講師の言葉は、講師の方がナレーターの先輩として後輩に向ける言葉です。かつて自分が現場で苦労したこと、やっておけばよかったこと、そんな想いで指導してくださっているはずです。
プロになって現場に立ってみると今のように指導してもらえることはありません。ましてやダメだしやお叱りを受ける機会というのはどんどん少なくなっていきます。仕事でやるからにはプロとして先方もこちらを扱ってくださいますのでこちらもプロの仕事で返さなければなりません。ダメ出しやお叱りを受けてはいけないのです。その分、過去に受けた言葉を思い出して自分で自分をジャッジできるようになっておきましょう。
常に自分を見つめ続け、磨き続ける
技術は一朝一夕では成りません。また、一度身に着けたからといってそのまま放置していては衰えていく一方です。人間というのは不思議なもので、満足してしまうとそこから先には進めないものです。進めないどころか、現状維持のつもりが徐々に下がってきてしまって気づくと随分と後退してしまっていることさえあります。
気の緩みが命取り。
毎日新しい新人さんがあらわれています。あなたより上手くて、あなたより安く仕事ができる人があらわれたら簡単に仕事はなくなっていってしまいます。
そうならないためにはどうすればいいか?
クライアントやスタッフの方とどう接していけばいいのか?
ナレーターに一番必要なのはセルフプロデュース能力かもしれません。
事務所に所属していても、これは同じです。大切なのは常に自分を客観的にジャッジし続けること。
今のこの読みはどうだったか?
このプランでよかったか?
今回のオーダーにちゃんと応えられているか?
冷静に自分を見つめ続けることが、自分を成長させるための方法です。
常に向上心を持って仕事にのぞむ人は見ている側、一緒に仕事をする側も気持ちがいいものです。
ぜひ「この人とまた仕事がしたい」と思えるナレーターになってくださいね。