突然ですが、シンギュラリティという言葉を知っていますか?

ナレーションソフトの品質も良くなることで危機感を感じる昨今ですが、更に精度が上がりナレーターの仕事が少なくなることに繋がることと関連するととらえているので、ご紹介しますね。

シンギュラリティとは?

コンピュータに使われているトランジスタはその数が増えることに比例してコンピュータそのものの性能も向上します。技術力として、コンピュータに搭載できるトランジスタの数が2倍になるのに必要な年数が常に1.5年、つまりは18か月であることに発見したのがゴードン・ムーアです。

1965年に発表されたこの法則はムーアの法則と名付けられました。それと同時にある仮説が提唱されだします。ムーアの法則通りにトランジスタの数が増加していくと、2045年に集積回路の複雑さが人間の脳を超えるというのです。

これを技術的特異点、またはシンギュラリティと呼ばれています。

2045年以降人々の生活はがらりと変わると言われていますが、どのように変わるのかやその変化を肯定的に捉えるのか否定的に捉えるのかということは様々な見解が出されています。

シンギュラリティ否定派の意見

否定的な意見の一つとして、現在私たちが行っている仕事のほとんどが特異点以降では人工知能に代わり、人間のできる仕事が限られるということが挙げられます。実際にスポーツの審判やレジ係、測量技術者といった独創性がほとんど必要ない仕事では10年以内に需要がなくなり激減すると言われています。

それに対して小学校の先生や心理カウンセラーといった職業では人間である必要性があるため人工知能が代行できないものが多く、シンギュラリティ後も存在し続けるのではないかと言われています。

これは私の体感ですが、最近での高等学校の教育方針として、こういった人工知能に取って代わられない独創性や倫理的な部分を育成する方針が高まってきているのではないかと思います。

例えばシンギュラリティが問題視される前に行われていた、単純に知識や教養をつける教育や暗記を目的とした教育は今では少なくなってきており、個々人がそれぞれ独自の考え方を持つことをすすめるような教育に重きを置きつつあります。

また、職を失うことよりも大きな規模の問題としてSFのようにコンピュータに人間が支配される時代が来ると述べる人もいます。この説はさらにコンピュータが疑似的に作り出した快楽に人間が嵌っていくという人間発の説とコンピュータのマインドコントロールや行動監視の技術により人間が支配されるというコンピュータ発の説とがあります。

どちらにせよ人間はコンピュータの作り出した世界に翻弄されることに変わりはありません。いかに自我を保てるかがキーポイントになるのではないでしょうか。

シンギュラリティ肯定派の意見

こういった否定的な意見とは反対に、肯定的な意見を提唱する人たちもいます。彼らは、シンギュラリタリアンと呼ばれ、2045年来るであろうシンギュラリティに対し、積極的な人たちです。ソフトバンクの創業者である孫正義さんもその一人です。

驚くことに彼はシンギュラリティが将来的に起こることはほとんど間違いないだろうと述べています。最先端技術でのトランジスタの縮小はどんどん進んでおり、このままムーアの法則どおりにいけば人の脳を超えることは十分にあり得ると言うのです。

そんな未来に可能性を感じると同時に感情を持たせず知恵のみを発展させることに関しては不安を覚えていると言います。なぜなら感情の持たない知恵のみを持ったコンピュータは自己成長能力によって暴走する可能性があるからです。ものごとを知りたいという欲のみが働いて人間に危害を及ぼす可能性が否定できないのです。

現在世界中でコンピュータに感情を持たせることを倫理的に許すべきかという問題があります。NASAとGoogleの協働機関であるSingularity Universityでも話されるような問題です。

この問題に対して孫正義さんは感情を持たさないよりも感情を持たせるべきだという考えを表明しています。あえてコンピュータに感情を持たせることで人間に豊かさを与えることを目標にすることや、表面的な自己成長欲を抑制することが可能なのではないかという考えなのです。知識を知恵が制御し、知恵を感情が制御することで、超知性を実現し、人間を幸せにできるようになると考えられています。

孫正義さんだけでなく、トランスヒューマニストの人々にはAIと人間との融合、共存という意味で魅力を感じ、賛同する人が少なくありません。

最後に

時間に比例して進歩していく科学技術の中で、我々がシンギュラリティを回避することはほとんど不可能でしょう。しかしその事実に消極的になっていては2045年以降の未来は生きていけません。これからがらりと変わるであろう社会で、どう生き方を見つけ生き抜いていくかということが今後重視されていくのではないでしょうか。

そういった意味で、私たちが今のうちに人工知能が補い難い部分である独創性などの能力を向上させていくことは、現段階で予想できない未来がどんな環境であってもその環境に適応する助けになります。それが現在の私たちができる最良の対策なのではないでしょうか。